小児歯科は、概ね乳幼児期から、永久歯が生える揃う学童期までを対象としています。虫歯の治療や予防処置、永久歯の歯並びや噛み合わせが正しくなるように治療や指導を行います。
小児歯科治療は、ただ単にお子さんの虫歯を治療をするだけでなく、お子さんの健やかな成長を歯科医師の立場から支援し、『お母さんと一緒に、健康で丈夫な美しい歯を育てていきたい』そのように考えています。
健全な歯を育てる為のお母さんの役割は、乳歯が生える以前から始まっています。胎生7週目ぐらいから乳歯はもう出来始めているのです。そして乳歯が顔をのぞかせる頃には、もう永久歯が育ちは始めているのです。
乳歯の特徴について
乳歯は比較的短い期間で造られるため、強度性や機能性において劣っています。
また乳歯のライフサイクルを考えた場合それが適していると考えられます。さて構造を考えるとエナメル質は歯の表面をコーティングして内側を守っている部分ですが、乳歯はこのエナメル質が永久歯に比べて薄いのです。
また有機成分を多く含み、軟らかく、化学的刺激や物理的刺激にも永久歯に比べて弱いのも特徴です。また髄管や側枝などの構造上の問題もあります。歯髄(歯の神経)があるところを髄腔といいますが、乳歯はこれが大きく、歯髄と歯の表面との距離が近いので、虫歯になるとすぐに歯髄まで届いてしまうのです。
指しゃぶりについて
指しゃぶりに多い子は一般的に児童心理の先生の考えでは、自分の思うようにならない子供に対して、思うように出来ない母親の苛立ちや不安が、指しゃぶりを引き起こすと考えられているようです。
例えば、イライラしたり怒ったり、禁止したり、命令したりすることが、指しゃぶりの原因であると考えられています。心理的に問題のある子供たちが、精神状態を補償しようとして、口に指をもっていって心の安定化を図るのです。
しかし下の写真のように、口がこのように変形してしまい、これが永久歯まで続くと、将来矯正治療を受けたとしても治りづらく、後戻りも通常より多く見られるようです。指しゃぶりに拠って、舌に変な動きの癖が出来たり、舌の位置が変わることから、口が醜くなって、将来のコンプレックスにつながるのは大きな問題といえます。指しゃぶりの停止は早ければ早いほど良いのですが、少なくとも永久歯が生えてくる前までには無くなっていなければならないでしょう。また心理的に影響がでるなどの情緒的な問題が引き起こされないように、3~4歳くらいまでは柔軟な態勢で見ていることも必要です。
指しゃぶりへの対応
3歳を過ぎてある程度物事の解釈ができるようになれば、言い聞かすことで一定の効果があるといわれています。
指に薬を塗ったりするのではなく、キャラクターなどの可愛いい絵を描いてあげると効果的です。これは2歳半位からでないと効果がありません。
寝つきの時におしゃぶりをさせてしまう方法もあります。それいがいは絶対に使わないようにします。意外と防止する効果があるようです。
物を使うよりは歯科医師としては、なるべく心理学的援助法を用いた方が良いでしょう。心理学的援助法とは、指示的カウンセリング法といって、歯科医師が親と子の話をじっくり聞いてあげることです。そして十分な共感関係を作ったうえで、指しゃぶりをやめる方法を一緒に見つけ出してゆく方法です。症状が起こってきた理由を一番良く知っているのは自分ですから、それに気付いてもらうための自己洞察のお手伝いをするものです。また行動療法とは望ましくない行動をコントロールすることです。療法は本人に負担がかからないよう、家族の協力を得ながら、叱責や罰、脅しなどを与えないようにして進めてください。あと、家族療法があります。年長児の指しゃぶりには複雑な家族関係が影響していることが多く、祖父母や兄弟の来院が必要な時があります。
おしゃぶりの利点と欠点
利点としては、精神的安定、簡単に泣きやむ、静かになる、入眠がスムーズ、母親の子育てのストレスが減るなどがあげられます。おしゃぶりの宣伝に使用されている「鼻呼吸や舌や顎の発達を促進する」は現時点では学問的に検証されていません。
欠点としては習慣性となりやすく、長期間使用すると噛み合わせが悪くなる、子供がどうして泣いているのか考えないでしようする、あやすのが減る、言葉掛けが減る、ふれあいが減る、発語の機会が減るなどがあげられます。
おしゃぶり使用の考え方
おしゃぶりは出来るだけ使用しないほうが良いのですが、もし使用するなら咬合の異常を防ぐために、次のことに注意しましょう。
発語や言葉を覚える1歳過ぎになったら、おしゃぶりのホルダーを外して、常時使用しないようにしましょう。
遅くとも2歳半までに使用を中止するようにしましょう。
おしゃぶりを使用している間も、声掛けや一緒に遊ぶなどの子供とのふれあいを大切にして、子供がして欲しいことや、したいことを満足させるように心がける。子育ての手抜きとして便利だからだけでおしゃぶりを使用しないようにしましょう。
おしゃぶりだけでなく指しゃぶりも習慣づけないようにしましょう。
4歳以降になってもおしゃぶりが取れない場合は、情緒的な面を考慮してかかりつけの小児科医に相談しましょう。